今回は、前回に引き、東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科准教授 三浦秀一先生の論文です。
これからのエネルギー政策について、先生の見解を述べています。
『自然エネルギーの可能性』
『原発の是非を問われた時、多くの人が不安視するのは自然エネルギーがその代わりのエネルギーになりうるのかといういうことである。
しかし、原子力の安全性がつくられた神話であったと同時に、自然エネルギーがあてにならないというのも同じくつくられた神話である。
われわれが未来永劫使えるのは自然エネルギーしかないというのは本来誰が考えても当たり前のことである。
であるにもかかわらず、自然エネルギーに関する情報も研究もきわめて少ないという日本の状況がこうした不安を煽ってきた。
近年、原発中心の日本の状況とは別に世界では自然エネルギーの導入が劇的に伸びている。
2010年は世界の累計発電設備容量として、自然エネルギーが原子力を初めて上回った。
また、震災直後、ドイツでは太陽光発電が原発を瞬間的に上回ったという観測が出される。
スペインでは同時期、風力発電が月間の最大電源になった。
スウェーデンは、バイオマスによるエネルギー供給量が原子力を上回るだけでなく、2009年には、石油をも上回り最大のエネルギー源となった。
日本を石油天然ガスの最大輸出先とするアラブ首長国連邦は、太陽エネルギーだけで自給する都市を建設している。
今後、自然エネルギーの普及に建築が果たさなければならない役割は非常に大きい。
建築の自然エネルギー利用にとって重要な視点は、電気だけでなく熱の自然エネルギーを使うという点である。
熱の自然エネルギーとは、太陽光温水器、バイオマス、地中熱である。
バイオマスは欧州でも風力や太陽光発電をはるかに凌ぐ最大の自然エネルギーであることはあまり知られていない。
EUではこうした熱の自然エネルギーを使うことを建築に義務付けた。
世界は持続可能な自然エネルギーを中心としたよりしなやかで強固な分散型システムの構築に向かっている。
建築はもはや単なるエネルギー消費ではなく、自然エネルギー利用の担い手へと変わらなければならない時代に入った。』
特に先生が注目しているのがバイオマスです。
バイオマスとは、生物資源(バイオ/bio)の量(マス/mass)をあらわし、エネルギー源として再利用できる動植物から生まれた有機性の資源のことです。
また、石油や石炭などの化石資源と対比して、「生きた燃料」ともいわれています。
バイオマスの種類は多岐に渡りますが、廃棄物系のもの、未利用のもの及び資源作物(エネルギーや製品の製造を目的に栽培される植物)があります。
①廃棄物系のものとしては、廃棄される紙、家畜排せつ物・食品廃棄物・建設発生木材・製材工場残材・黒液(パルプ工場廃液)・下水汚泥・し尿汚泥 等があげられます。
②未利用のもの としては、稲わら・麦わら・もみ殻・林地残材(間伐材、被害木等)等があります。
③資源作物としては、さとうきびやトウモロコシなどの糖質系作物やなたねなどの油糧作物があげられます。
山形県の場合は、何といっても、未利用のものすなわち木の資源が豊富です。
資源はいっぱいあるのですが、まだまだ利用していないのが実態です。
今後は、県産材の木の利用方法は大切であることを、三浦先生は強調しています。
日本はエネルギー資源がないのではなく、利用していないだけです。
今後日本で、木材がエネルギー政策で注目されていくのは間違いないと私も思っています。
林業の時代が目の前まで来ているように思えるのですが・・・
by kakizaki