Q1.0(キューワン)住宅を建てよう!

Q1.0(キューワン)住宅を建てよう!

Q1.0住宅(キューワン)とは、自然エネルギーを出来るだけ利用しながら「冬の暖房エネルギー」と「夏の冷房エネルギー」を減らすために、建物そのものの断熱性能を向上した「超高断熱住宅」です。

すなわち、

『日本の各地方の気候特性を活かし、その地域に適した超省エネルギー住宅』


と言えます。(社団法人新木造技術研究協議会が提唱する家づくりです。)
「Q」とは、「熱損失係数W/㎡」のことをいい、その数値が小さい方が、断熱性能が高い事を表わしています。

これまでの住宅は、各部屋ごとに暖房をおこなう「部分暖房」でした。

国の基準の次世代省エネルギーレベルで、これまでと同じような造りの家にしてしまうと、家全体を暖房する「全館暖房」をした場合、これまでの家に比べ約1.5倍の暖房エネルギーが必要になります。

これでは、次世代省エネルギーとは名前だけで、むしろ増エネルギーになってしまうのです。

そこで、私たちは、一般住宅の暖房エネルギーの半分以下ですむ家が、本当の省エネルギー住宅になると考えました。

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こうした住宅の熱損失係数は床面積あたり、概ねQ値が1.0台の住宅になります。
そこで私たちは、このような住宅に「Q1.0(キューワン)住宅」という名前を付けることにしました。

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上の表は、建物の広さが120㎡(約36坪)の住宅を例にしています。
この建物の場合、次世代省エネ住宅とQ1.0住宅の暖房消費エネルギーは、年間で、約800㍑の差があります。
これを30年間で計算すると、Q1.0住宅は、暖房費で約192万円(灯油80円/㍑)も少なくて済みます。

 


 

doc02175320170203115419_001 a2678825-s室蘭工業大学   名誉教授 鎌田紀彦

このQ1.0住宅を提唱している室蘭工業大学の鎌田紀彦名誉教授監修の『燃料半分で暮らす家』が刊行されました。

この中で特筆することは
「日本には日本に合った省エネルギー技術が必要である」
という事です。
まとめてみると、

1)日本は北欧などと違って、寒い地方でも太陽の恵みがあるのでこれを最大限利用する。

2)高断熱住宅は、夏の暑さ対策にも有効なため全国で必要である。

3)高断熱住宅は、夏の室内の空気の流れを考慮することによりエアコンに頼らない家づくりが可能。

このようなことが言えることが分かってきました。

 


 

そこで、Q1.0住宅を建築するときのポイント

① 断熱材は厚さが重要

断熱は、断熱材の「性能×厚さ」で表されます。
そのため、断熱材自体はそこそこの性能でも、厚い方が全体として有利になります。
私たちは、グラスウールの断熱材をお薦めしています。

理由は

1)安価である

2)リサイクルができ、環境に優しい

3)不燃材である

4)吸音効果がある

などがあります。
高断熱住宅を普及させるためには、高価な素材は使えないのです。

 


 

② サッシは日射侵入率がポイント

サッシは、Q1.0住宅において非常に重要なファクターです。
断熱性能が高く、特に南側には、日射侵入率の高いガラスを選ぶことがポイントになります。
ここ庄内地方は冬の日射が少ないと感じていましたが、冬でも日射をできるだけ取得するような工夫をした方が、暖房エネルギーが減ることが分かってきました。
実は日本という国は、冬期間と言えども太陽の恵みがいっぱいあるのです。
これを利用しない手はないのです。

 


 

③ 熱交換換気システムは効果抜群

換気は、折角温めた空気を単純に排気していることになります。
出来れば、換気は少なく抑えたいのです。
そこで効果があるのは、熱交換型換気システムです。
最近は、熱交換率が80%の製品が販売されました。
費用対効果を考えると、一番に取り入れてほしい設備です。

 


 

【山形県をQ1.0住宅特区に指定】
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社団法人新木造住宅研究協議会は、山形県を『Q1.0住宅特区』に指定し、Q1.0住宅の普及に力を注いでいます。
私たちは、Q1.0住宅を特別な省エネルギー住宅とは思っていません。
これからの住宅のスタンダードだという認識です。
国は、2020年までにレベルの低い次世代省エネルギー住宅を標準にする予定でいます。
それは、前段に書きましたが、省エネルギーどころか増エネルギーになってしまうのです。
私たちは、Q1.0(キューワン)住宅レベルが標準になるように働きかけていますが、恐らく無理でしょう。
であるならば、私たちだけでも、この現状を住宅建築を考えている方々に訴え、このQ1.0住宅を普及していくように働きかけていきたいと思っています。
目に見えない部分のため、なかなか理解して頂けないかもしれませんが、着実に一歩一歩活動を進めていきたいと思っています。
さあ、皆さん、これからの家づくりのスタンダード性能のQ1.0(キューワン)住宅を建てましょう!

 


 

~動画紹介~

社団法人新木造住宅研究協議会の会沢健二顧問による解説動画をご紹介します。
①暖房燃費について

 

②自然温度差について

 


 

Q1.0(キューワン)住宅を建てた方のお声

取材日 2016年1月29日
インタビュアー:
(社)新木造住宅技術研究協議会 事務局長 理事 会沢 健二 氏


暑さ、寒さの外敵から身を守る、住み心地抜群の我が家は、例えれば“要塞”

いい家ができたと喜ぶ高橋夫妻

いい家ができたと喜ぶ高橋夫妻(写真1)

山形県酒田市で地酒専門店を営む高橋修一さん(45 歳)は、カメラや車、電気製品などいわゆるメカに強いと評判の人。
リビングには本格的なポルシェ等のミニチュアカーも置かれている。

お風呂でテレビを見たり外の気温が室内で見て取れる機器を設置したり、システマチックな暮らしをしている。
それらはみんな高橋さん自身が自分で組み立て自分で設置する。勿論何かあれば自分で修理する。

 

本業の酒店もインターネットで大盛況なのだが、これらは全て高橋さんのアイデアで成功しているようだ。(詳細略)

03そんな高橋さんが選びに選んで建てた住宅が2014 年の春完成した。

建築会社は、これも選びに選んで地元のコスモホーム(酒田市 柿崎圭介社長)に依頼した。選びに選んだ経緯が面白いので読者の皆さんのその顛末を紹介する。

家づくりの参考にしていただきたい。

 

■我が家は要塞(ようさい)

高橋邸は厚い断熱材で覆われている。

断熱材には、高性能グラスウールが使われていて、壁は内外で210mm、屋根は300mmの厚さがある。これらは現行基準の最高とされる長期優良住宅と比較して倍以上の厚さだ。窓はしっかりした断熱サッシ(YKKAPW330)にガードされ、住宅全体の断熱性能は省エネ基準の2 倍以上の高性能で、省エネ性能(暖房にかかるエネルギー)は国の基準の1/3 にまで削減という優れた住宅に仕上がっている。室内は暖房換気がシステマチックに設備され、夏冬とも住み心地抜群であるという。高橋さん夫妻の表情(写真1)からもうかがえる。

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左:標準図 右:厚い断熱210ミリ

2016 年1 月末、2 度目の冬を迎えた高橋邸を、施工したコスモホームの柿崎社長と共に訪問した。

ニコニコと笑顔で迎えてくれた高橋さんは「いかがですか、住み心地は」という私の問いに「すごいですよこの家は。雨風は勿論どんな寒さにも暑さにもびくともしないんです」そう答えてくれた。

私はすかさず「そんな家を、メカに強い人が何かにたとえたら何になりますか?」と聞いた。すると、少し間をおいてでた答えは「要塞(ようさい)・・・そう、要塞ですね」だった。

私はそれを聞いて頭に電気がついたようにひらめきが走った。

さすが機械をいじる人だ。長年色々な場面に出会ってきたが、要塞のたとえは初めて聞く。長い間、探していたものに出会ったような感覚になった。要塞という言葉をあらためて辞書を引くと「外敵からの攻撃を防御するために建造する堅固な建造物」書かれている。(広辞苑)まさにその通りであろうと私も思った。

酒田鶴岡のある山形県庄内地方は、冬の日本海から吹き付ける風が半端でなく強い。
コンクリート造のビジネスホテルに泊まっていても夜中、風の音で目が覚める事がある。内陸のようには冷えなくとも0℃前後の気温に風が吹くと体感温度は寒い。酒田の人が口をそろえて寒いというのはそういう理由もある。ある人は、冬の暖房時、風が家の中を吹き抜けて、まるで野原でたき火をしているようだと言っていた。要塞というのが実によくわかる。

 

■極寒ロード

高橋さんの話す言葉は歯切れよく実に新鮮だ。
「実は極寒ロードというのがあるんですよ」と、今度は極寒ロードという初めて聞く言葉が出た。

今となると懐かしい気がすると前置きして、笑いながら「家の中の寒い道」をこう話してくれた。

以前の家は、台所の向こうが戸一枚で脱衣室になっていて、さらに戸一枚を隔ててお風呂があった。まず台所が寒かった。奥さんの話によれば立っているのもいやになる位、足下からじんじん冷えてきた。
お風呂に入るとき、まずその寒い台所を通って戸を開けます。するとまず一回目の冷ゃ、外と同じくらい寒いので、ささぁっと服を脱いでお風呂の戸を開けると、暖かいはずの浴室は風がスースーしてさらに寒い。
急いで風呂に入るのですが
「会沢さん、そうしてお風呂に入ったら暖かいと思うでしょう。それが違うんです。そういう家は入っている内に寒くなるんですよ。」
「入っている内に寒くなってしまうなんてわかりますか?ゆっくりお風呂に浸かるなんて寒い家ではできないんですよね」
言われてみればわかる。露天風呂でも寒いと長く入っていられない。
「こうして、決死の思いでお風呂に行くのですが、行きも帰りも、台所から浴室への道は我が家の極寒ロードでした」
そう言ってまた笑う。

「それにしても以前の家はひどかった。玄関の建て付けが悪く、風の強い日はヒューヒュー音を立てて入ってきました。風だけじゃないんです、玄関の中に雪が積もるんです」
子供も大きくなって、さすがに家を何とかしましょうと言いだしたのは奥さんで、高橋さんも真剣に考え始めたのだった。

 

■住宅展示場訪問~地元工務店・高断熱住宅との出会い

そんな経験をしての家づくりだったから、ここに至るまでさぞかし勉強したのだろうと読者は思うかもしれない。ところが、意外や意外、実はそのときはまだ高断熱住宅を知らなかったというのだから世の中の結末というのは面白い。

まず住宅展示場へ行って最初は安いことで名が売れているTホームに入った。
ここでは驚きの連続だった。テーブルに着くなり高橋さんは自分の生年月日から家族構成を書かされた。話を聞くと言うより聞かれることの方が多かったという。

色々なやりとりをしていると、「あなたは年回り的に来年家を建てるのがとても良いです」と言うではないか。
そんなことは考えてもいなかった。そんなこんなのやりとりをして展示場を後にした。

その後一週間位して、「あなたへのおすすめプランはこれです」と図面と見積書が送られて、契約を迫られたという。内心では、地元の工務店より大手の名のある住宅会社の方がいいと思っていた高橋さん夫妻だったが、住宅展示場とはこんなモノかと展示場行きはあきらめて、今度はウェブで検索することにした。

そこで、地元のコスモホームが目にとまったのだという。

住宅のデザインがイメージと合ったのだ。
そしてここで初めて断熱住宅を知ることになった。

コスモホームの今のホームページには断熱がさほど強調されていないが、この頃は高断熱が大きな差別化としてかなり細かく記述されていた。

中でも、年間の暖房エネルギー消費量、暖房熱源に何を使うか、環境を意識し、省エネで快適な住まいをつくる会社の方針が、延々縷々述べられていた。そこには柿崎社長の思いがかなり熱く語られていて、高橋さん夫妻はそれを全部、繰り返し読んだという。そうして初めて暖かい家、快適、省エネ、全室暖房とか、家づくりを知り、コスモホームと面談することになった。

 

■ある事件、土壇場で契約をとどまった理由

年間どの位の灯油が何リットルで暖かい暮らしができるか、なぜ高断熱が必要か、そんな話を、計算を交えて聞くことができた。

こうして計画が進んでプランも価格もほぼ決まった。
いざ契約というときに、思わぬ「待て」が入った。

高橋さんの親から、ストップがかかったのだ。親心である。

「そんなローンを組んで大丈夫か、高断熱住宅とかいうものに浮かれていないか」およそそんな内容だったという。
高橋さんは、言われてみればそうかもしれない、そう思い直して、事実上いったん白紙に戻したのだった。
(驚いたのはコスモホームだったが、ここは信じて待つことにしたと柿崎社長は話す。このとき柿崎社長はその真意を知らなかった)

 

■住宅展示場巡りから得たもの

それから、高橋夫妻は再び住宅展示場回りを始めた。

クリックすると大きく表示されます

QPEX (図2) ※クリックすると大きく表示されます

大手のSハウスはじめローコストを謳う住宅会社など数社を回り断熱性能、省エネ、暖房費などを聞いて回った。

ある会社は、断熱性能のことをいうとそんな断熱性能は酒田では必要ないという会社もあれば、高断熱ですという会社は法外な価格を言う会社もあった。

概して、断熱には不熱心で、ましてや年間の暖房エネルギーを言うような会社はなく、価格で売る会社は断熱を軽視しているのが実情であった。いろいろな話を聞いて、結局、コスモホームの言うことに帰着することがわかってあらためてコスモホームで建築することを決めたのだった。

契約同然まで進んでいた話を中断したことで回り道はしたが、価格や性能に、納得の行く契約ができた。

事実、コスモホームでは熱性能や省エネ性能をQPEX(新住協発行)というプログラムを使って全棟計算結果表(図2)を施主に提示する。酒田に限らず、住宅展示場に並ぶ住宅会社にそういう性能を数値で表せるような会社はほとんど無い。
論理的理知的にものごとを進める高橋さんが、コスモホームに帰着したというのはそういうことだったのだ。

 

■快適さを求める設計

その頃、山形ではQ1.0 特区という厚い断熱を推進キャンペーンが行われていたこともあって、高橋邸は壁の外側にも105mmの断熱材を加える事になった。壁は合計210mmの断熱になる。サッシは樹脂サッシの高性能ペアガラスという重装備で建築された。その結果が“要塞”になったのである。

これが、関東や仙台のように冬の日射が多い太平洋側の地域ならもう少し軽装備で日射を取り入れる設計もできるのだが、庄内地方の冬は日射がほとんど期待できないので、断熱を優先した設計になっている。その狙いは当たって、日本海側独特の曇天続きの重々しい冬でも室内は快適で寒さ知らず、その上、以前より遙かに省エネという理想的な家ができあがった。

高橋夫妻は大いに満足している。

 

■一番いいと思うこと

冬は日本海から強い風が吹く

冬は日本海から強い風が吹く

妻の由紀さんに「何が一番よかったと思っていますか」と聞いてみた。

「勿論、どこにいても寒くないのが一番うれしいのですが、台所仕事をしているときでも、部屋全部が見渡せて、家族みんなと一緒にいる感覚が楽しめるところがこの家にしてよかった」
と話してくれた。真冬でも寒くないから家族みんなが一つの部屋でのびのび暮らしていられるのだ。

主婦として、妻として、母として家庭生活に充実感があるのだろう。

高橋夫妻はこのことに喜びをかんじているのだが、実はそれ以上にコスモホーム柿崎社長はうれしいという。断熱や気密は家づくりの手段であって、快適に暮らしを楽しむことが目的だから、そんな感想が一番うれしいという。

 

■今では遠い昔の出来事

極寒ロードがあったのはたった2 年前、本当に快適な暮らしができるようになったらそれが遠い昔の出来事のように思えると高橋さんがしみじみ言う。

木川屋という山形の地酒だけを扱う高橋さんのお店は、今、全国からネットで注文が来るという繁盛ぶり。

お客さんには高橋さん夫妻のさわやかな笑顔も魅力になっているに違いないと思う。あの笑顔の背景には暖かい家、暖かい暮らしから生まれている部分もあって、その家づくりにはこういうドラマがあったということも知って欲しい。読者の皆さんが家をつくるときも高橋さんと同じようないい家をつくって欲しいと思うから。