酒田市T様邸「リビング越しにつながる広いテラスがある家」
ご主人=主 奥さま=奥 インタビュアー:柿崎=柿
【お客様】T様
【住所】山形県酒田市
【引渡し】2016年12月
【土地面積】82.3坪
【延床面積】44.1坪
【熱損失係数Q値】1.14
【インタビュー】2022年6月26日
◆目から鱗!自分が設計した図面を持っての住宅会社探し
柿:Tさんとの出会いは、今から約6年前の正月明けだったと思います。その時、プランニングでだいぶ悩まれていたようでしたね。
主:自分が住みたいなって家を『3Dマイホームデザイナー』で作ってみたんです。
その図面を持って、「こういう家が出来ますか?」「いくらぐらいで出来ますか?」という感じで住宅メーカーさんを2社。そして最後に行ったのが、コスモホームさんでした。
柿:そうでしたね。
主:コスモホームさんはハードルが高くて…。
住宅メーカーには『展示場』があるので、週末とかに何気なく見学に行けますよね。イメージやどんな材料を使っているのかが明確に打ち出されています。
私の中で、コスモホームさんは『設計事務所』っていうイメージで、気軽には行けなかったのです。ホームページで見る建物がすごくおしゃれで、「これは高いんじゃないかな」って(笑)でも何回も家を建てられるわけじゃないし、一生に一回のこと。だから「ここはやっぱり妥協できない」って思って連絡をしました。
柿:他社さんで、Tさんが考えたプランをそのままプランニングしたのを見て、奥様がなかなか首を縦に振ってくれないというようなお話でしたね。
奥:住宅メーカーさんも夫の意を汲んでくれたのはわかりました。「こういうのをやりたい」って言うから、それを基にデザインしてくれたのだと思います。
だけど私は、言わば夫は素人というか…。そのプランを同じように出されてきて「あれ?」って感じたんです。2社とも似たようなプランで「う~ん???」という気持ちになりました。
主:物置がすごく大きかったんだっけ?
奥:もう全然覚えてない(笑)
主:自分で作っていくうちに空間が余ってしまって、じゃあここは物置部屋にしようかなと。それがやけに大きな空間になってしまいました。
柿:それで弊社にいらして、どう感じましたか?
主:もう目から鱗でした。
奥:夫がすごく感動して帰ってきたのをよく覚えています。
主:最初に私が作った図面は「見ません」と柿崎さんから言われました。「え?何で?」と驚きました。「私たちはお客様の生活をヒアリングして、それからプランしていきます。お客様の想像以上のプランを提案できなかったら、建築士じゃないですから」っていう話で。「そうかぁ!」って、すごくかっこ良かった(笑)
ただここでまた一つハードルが…(笑)
コスモホームさんはプランニング料に10万円が掛かる。それにも悩みました。
柿:私も本気なので、お客様にも本気で向き合って欲しいという気持ちで、プランニング料をいただいています。
主:図面を描くのって大変ですもんね。私も『物作り』の仕事をしていますから、かなりの労力がかかるのはよく分かります。
◆妻を説得して参加したオーナーズ邸訪問
柿:そこからプランを申し込む決断をされたのは、何がきっかけでしたか?
主:オーナーズ邸訪問です!
奥:あれは影響が大きかったですね。
人様のお家にお邪魔するのを、私は正直迷っていました。でも夫に「まず行ってみよう」って説得されて、それならって感じで。その時私はまだ、コスモホームさんのことをそんなに知らなかったので、「まぁ行ってみるか」という気持ちで参加させていただきました。
柿:参加されてどうでしたか?
奥:もう感動でしたね。冬なのにオーナーさんは薄着だし、「何ですか?この暖かさは」って。性能の良さもですが、これが『住んでいる人が求めていたデザイン』なのだろうなと思いました。
タイプの違う2軒を見せてもらって、自由度が高いなって。住宅メーカーさんで見せてもらったのは、同じような建物に見えました。
全然違うタイプのお家をそれぞれに見学して、本当にすごく感動しました。
主:住んでいる方のお家に入って見せていただくというのは、なかなか出来ない体験でした。
柿:住み手のお話を聞くのが一番わかりやすいと思います。私たち作り手が説明しても、上手くは伝わらないのです。やっぱり本当に住んでいる方からお話を『聞いて』もらって、それから『見て』『体験』して頂くのが、これから住む上でかなり参考になるのではないかと思って開催しています。
奥:住んでいる方の『こだわり』も伝わってきました。
主:それぞれのオーナーさんが楽しんでいて、満足度がすごく高いのだろうなっていうのが伝わってきました。そういう家を見ちゃったので、ここに頼めばそういう家が実際に建つのだなと。そこで、「10万円を払ってお願いしてみよう」と決めました。
◆思い出が詰まったプランニングシート
柿:構造見学会にも参加していただき、施工の様子を見てからのプランニングでした。
色々と要望を書いてもらった『プランニングシート』を基にご提案しましたが、その時の印象はいかがでしたか?
主:(当時のプレゼン図面を持って)これですか?
柿:まだ持ってらっしゃるんですか!?
奥:もちろん持っていますよ!全部取って置いています。
主:これは大切な思い出です。ドキドキしながらプレゼンを聞いて。自分が設計したのが恥ずかしくなりました(笑)
柿:私はその設計面は、結局見ていないんですよね。
主:素人が手を出しちゃいけないんだなって思ったのが、南からの光の入り方や西日を入れないこと、そして生活の動線。素人では考えられない細かいところに、すごく気を配ってくれているのが分かりました。「あ!これはやっぱり素人は設計しちゃダメだ。もう自分が設計した図面は封印しよう」って(笑)
奥:あのプレゼンを見た途端、夫はもう図面を見せてくれません。(笑)
主:プレゼンはプロジェクターに写して、丁寧に説明してくれました。「こういう風に私たちの生活をプロデュースしてくれるんだ」っていうのがすごく分かって、とっても嬉しかったです。
奥:すごいですよね。イメージがし易いし、もう「あぁ!」という感動がすごかった。
主:今までのとは、ちょっとレベルが違うものがありました。
奥:(プレゼンパースを見ながら)こういうのは、今までの提案にはなかったよね。平面図だけじゃなくて、パースも見せてもらえたのでイメージのし易さが全然違いました。
柿:大切に持っていて下さって嬉しいです。
プレゼンで発表したテーマは《リビング越しにつながる広いテラスがある家》。
プランニングシートに「季節を感じながら音楽を聞き、癒される空間。明るく開放的で、テラスへ大きな窓で繋がっていて、テラスに緑があふれている。テラスは明るい色のタイルで床を作り、道路に面している部分を塀で仕切ることで、プライベートを確保する。軒を出すことで、真夏の日射を遮る。」と書いてあったのです。
最初からこのテラスが、大きなテーマと思いました。
あともう一つは、先ほど話にあった『南の光』をいかに入れるか。太陽の光をどうやってこのリビングに入れるかが、私にとって一番難しいところでした。
内容的には大体ご理解いただいて、一回のご提案でほぼOKをもらったと記憶しています。
奥:本当に一回で決めてしまいました。(笑)
プランニングシートを書いているうちに、やっぱりイメージするものってあるんですよね。『望むもの』っていうんでしょうか。建てようって最初に思った時はそこまで考えていなくても、プランニングシートに書いて文字に起こすと、こういうのをしたいのだなって気付くんです。
柿:皆さん最初は「わが家は普通でいい」って仰います。
奥:本当にそう(笑) 、私たちもそう思っていました。
柿:でもよくよく聞いてみると、やっぱり何かしらはあるのです。私たちにとっては、それが重要です。そこから紐解いて、全体の構成を練っていきます。
私たちなりに、いいプランができたかなって思って提案しました。
奥:ダイニングキッチンの形は発想に無かったから、「え⁉」って思いました。
柿:土地の形に合わせてダイニングスペースを三角形にして、光が入るようにしました。
プランニングシートに「できるだけリビングを明るくしたい」とあったので、この案が出てきました。これもやはり、プランニングシートがあったからこそのアイディアです。
奥:この空間が充実しているので、LDK全体の満足度が高いですね。
柿:プランニングシートに「料理をしている場所からリビングに居る子どもの様子が見えるようにして欲しい」とありました。キッチンに立って、家族が居るのを見渡せる。作業するスペースとの関係、動線も含めてどういう風に見えるかを考えて、そこから発想していくことが多いのです。私たちにとってキッチンは家の中心です。
主:冬は特に『光』を感じるよね。ダイニングの窓から光が入って、部屋が少しずつ暖かくなる。あの窓が無かったら、光が入らなかったなって。
柿:やっぱり違いますか?
奥:全然違いますよ。
柿:頭の中では「こうだろう」と思って作りますが、実際のところは住んでいる方に聞かないと分からない。こうしてお話を聞かせて頂いて、私も良かったです。
◆土地選びの条件
柿:ご相談にいらしたときは、既に土地を購入されていらっしゃいました。その経緯を教えてください。
主:妻がちょうど近くを通った時に売地になっていました。周辺の建物からの影響などは全然分かっていないままに買ってしまいました。
奥:ピアノをやりたいと考えていたので、隣家が接していない土地がいいなって思っていたんです。この土地ならもうピッタリだって。
柿:それは正解だと思います。防音も考えて設計しましたが、外への音漏れはどうですか?
奥:部屋としては防音の性能はとてもいいです。
住んでみて、ピアノ室へ直接出入りできるよう設けた玄関ドアから音が漏れてしまうことがわかりました。壁や窓じゃなくて、ここかって。
主:それ以外からは全然音が聞こえないよね。
奥:玄関の反対の庭に居ても全然聞こえません。
柿:確かに玄関ドアは防音仕様にはしていなかったですね。
奥:部屋としては防音の性能が高いし、廊下側の防音ドアもすごくいいです。
◆家づくりのスタート地点
柿:そもそも家を建てようと思ったきっかけを教えてください。
主:子供が大きくなってきて、家が欲しいなって考えるようになりました。アパート暮らしだったので、上下階や隣が気になるようになりまして。
柿:お子様の成長が一番のきっかけですか?
主:そうですね。家を建てようと思って、まず住宅展示場を見ることから始めました。
でも今になって思えば、展示場の建物ってすごく立派ですよね。そのイメージで建てちゃうと普通の家になっちゃうような感じ。勿論そうじゃない家もあるのでしょうけど、コスモホームさんの家はそのまま。最初に思ったおしゃれなままに建つ。
奥:「こんな家を建てられるんだ。私たちでも…」って。
柿:そこは私たちも強く伝えたいことです。お客様の希望をなるべく叶えていきたいなと思うのです。多くは限られた予算の中で建てるので、色々と考えながらお客様と相談できる形がとれればと。
その辺の対応はいかがでしたか?
主:自分の中では高いハードルでしたが、「一回しか建てられないだろう。だから妥協はしたくない」という気持ちがあったので、こうして辿り着いたのだと思います。
普通に考えて住宅展示場があれば気軽に行けるので、そこをどういう風に伝えるかでしょうか。最近はYouTubeも見る人が多いですよね。私も何か力になれれば(笑)
柿:このインタビューが、大きな力になってくれると思います!
奥:担当さんとは話し易かったです。私はクローゼットの扉を希望していたのですが、「この扉1枚○○○円です」って教えられて。「扉じゃなくてカーテンやスクリーンで後付けも出来ますよ」っていうのも言ってくれて、「じゃあその分、違う所を充実させようかな」とか。そんなやり取りがすごく楽しかった記憶があります。家を作っている時の相談が、すごく楽しかったです。
主:提案してもらえるのが、良かったよね。
奥:「こういうのもありますけど、止めた方がいい」というのも(笑)
柿:私たちが心掛けているのは、提案型の住宅。もちろんお客様が考える要素もありますが、テーマに向かって、どうしたらいいのかを私たちが考えていきます。
お金もかかることですから、例えば他にもっとやりたいことがある時は、ここは後でも出来るので、今回は止めておきましょうと提案することもあります。
トータルで、お客様からご満足いただけるかどうかが大切です。
奥:建具の取手一つにもこだわってもらって、本当に楽しかった。
柿:選ぶのって楽しいですよね。
主:フック、トイレットペーパーのホルダーも素敵な物がいっぱいあって楽しかった。
柿:建築って大きいですが、実は細かな一つ一つから構成されています。パッと見た時に「きれいだな」「素敵だな」って感じて貰えるためには、意図的にしないとなかなか出来ません。「そんなのどれでも同じでしょ」と言われるかもしれませんが、全然違います。こだわりが集まって綺麗に見える。そこが、お客様も私たちも満足できる着地点だと思います。
主:オーナー邸訪問で体験した『オーナー様たちのこだわり』は、私たちの参考になりました。我家は我家のスタイルで「こういう壁にしよう」とか「色にしよう」「取手にしよう」っていうのが見えてきました。
柿:リビングのこの壁はまさにそうですよね。
主:これはサービスして頂いたのですけどね(笑)
奥:プレゼン時のパースでは白い壁だったのです。このパースを見て「テレビを見ながら収納のドアが見えるのはちょっとなぁ」って思って相談したんです。「収納は欲しい。でも明らかにそこにドアがあるのは…」って言ったら、こういう提案をしてもらって。「えー!すごい」って。
主:「こういうデザインの壁にしますが、これは実験ですからサービスさせていただきます」って担当さんが。もっと実験してくれていいよって(笑)
柿:今回は私たちに宿題を出されたんですよね。答えは色々あるでしょうけども、私たちなりの回答としてこうなった。
そういうキャッチボールをしながら家づくりをすると、オリジナルの家ができていくのです。それが嬉しい。だって6年経ってもこうして当時の話ができるじゃないですか。これが私たちは楽しいのです。壁一枚の話で(笑)
主:その時は提案して、相談されて、担当さんはかなり頭を悩ませたと思うんです。
奥:見るとみんなが驚きます。「ここ収納なんだよ」ってドアを開けると「えー?」って(笑) ドアがあるのがわからないですからね。嬉しい。
◆建てて完成じゃない。今は庭づくりに夢中
主:今、ちょっとずつモルタルを庭に敷いています。砂地なので草むしりが大変なんですよ。何とか草むしりをしない方法をと考えた結果、モルタルを敷くことに。どうやると上手くできるのかをYouTubeを見たりしてやっています。
柿:庭らしくなってきましたね。
主:コンクリートを300㎏くらい買って。かなり重労働ですけどね。だいぶ草むしりの必要がなくなりました。今度はこっちの庭をナチュラルガーデンみたいな感じにしたいなと。楽しんでいますよ。
奥:この家に合った庭にしたいね。
主:私たちの家の形ってすごく素敵ですよ。私がすごく気に入っているのがこのスタイルです。(外観パースを見ながら)箱が2つ重なって見えるところ。かっこいいです。
自分の家なのに「いいなぁ。かっこいい」って見ちゃいますもんね。
柿:これは意図的にやっているので、気づいてもらえて嬉しいです。最初は出っ張りのないデザインで考えていましたが、どうしても納得いかなかった。そこで2階を少し出してみたのです。この土地は、北と東西側が周りから見える角地です。三方から見える土地って結構難しいのです。通常は二方ですから。設備関係は建物で隠れるよう南側へまとめています。
奥:そういう所がいいんですよ。道路から室外機が見えないとか、些細なことだけど本当にいい。
主:「子供部屋にエアコンを設けたら、室外機はどこにつくんだろう?」って見たら、ダクト穴が見えない側についているんですよ。
奥:そこまで考えてくれていて、すごいなって。
主:あと、テラスでやるつもりだったBBQを実はバルコニーでしています。リクライニングチェアを置いて星空を見たりして。家の色んなところで楽しんでいますよ。
柿:6年経って、こうしてT様ご夫婦と楽しい会話ができるというのは、私たちにとって一番の宝物です。家は建てて終わりではなくて、むしろ建ってからが始まりだと思っています。メンテナンスもしながら、住み続けていかなければなりません。私たちとしては、長いお付き合いができればと思っています。
今日は、お二人のお話が聞けて、本当に楽しかったです。ありがとうございました。